咲-Saki-の大将戦に登場した古役と、そこから浮かんでくる五筒と一筒に込められた意味について

まず古役とは何かというと、かつては採用されていたけれども現在ではほとんど忘れ去られてしまった役のこと。wikipediaに説明があるので、詳しくはそちらへ。
大将戦において、作中で触れられることはありませんでしたが、いくつか仕込まれていたので、それについてまとめつつ、繰り返し出てくる五筒が一筒が、それぞれ咲と衣を象徴するかのように扱われていたことについて書いてみますよ。

・二索槍槓(リャンゾーチャンカン
前半戦・東二局一本場、和了者・加治木
咲の2索加カンに対する加治木のチャンカン。二索の図柄を槍に見立てた古役で満貫。槍の文字が入った役に槍の図柄ということで、ファンタジーバトルで槍がこれでもかと飛んでくるのも納得。


一筒摸月(イーピンモーユエ)または一筒撈月(イーピンラオユエ)
前半戦・東三局一本場、和了者・衣
衣の一度目のハイテイによるアガリ



一筒の図柄を月に見立てた古役で満貫。海底撈月を得意とし満月の夜には力が増すという、何かと月に縁のある衣を象徴するかのような役。

・風花雪月(フウカセツゲツ)
前半戦・南三局、和了者・衣
「風」=門風牌(南場なら南)もしくは荘風牌(西家なら西)、「花」=五筒、「雪」=白、「月」=一筒、としてそれぞれを刻子とした役。役満

・花鳥風月(カチョウフウゲツ)
前半戦・南四局、和了者・衣
「花」=五筒、「鳥」=一索、「風」=門風牌もしくは荘風牌、「月」=一筒、としてそれぞれを刻子とした役。役満


前半戦は衣が圧倒的な力を見せつけて終わるわけですが、大会ルールでは上の風花雪月と共に跳満どまりだったので、まだ運が良かったのかも知れず。

・五門斉(ウーメンサイ)
後半戦・南二局、和了者・咲
萬子・筒子・索子・風牌三元牌を全て使ったアガリ。2翻もしくは役満

発アンカン:32符、一筒アンカン:32符、ダブ南の雀頭:4符、一萬出和了りの明刻で4符、副底:20符、門前加符:10符の合計102符。一の位を切り上げの110符で役は発のみ一翻というマニアックな和了りなわけですが、牌姿の方もなかなかマニアック。

・一色四順(イッショクヨンジュン
後半戦・南四局、咲のテンパイ形

ここから咲が、衣が捨てた1筒をカンをして逆転するわけですが、1筒でロンでも一色四順という役満だったりするという。まあそういう役があったという記録だけあって採用されてることはほとんどないので、アガったら負けが確定してしまうわけですが。
余談だけどこの形で1筒ロンなら、チンイツピンフ・リャンペーコーの10翻で倍満。作中で跳満と言われてたのが引っかかりましたが、原作では1112222333345の形のチンイツのみで跳満になっていたらしいので、アニメの方で牌姿かセリフを間違えたのかなと。まあ点差的に跳満と倍満のいずれにしても咲が衣を逆転することは出来ないので、ストーリーを破綻させるほどのミスというわけでもなく。
古役ネタをいろいろと仕込んでいた大将戦だけに、アニメではテンパイ形だけでも一色四順の形にして見せたような気もするところ。
追記:ソフトでは原作どおり、1112222333345の形に修正されてました。

・五筒開花(ウーピンカイホウ)
後半戦・南四局、和了者・咲
五筒の図柄を花に見立てた古役で満貫。

役としては加算されませんが、花にちなんだ名前を持ち嶺上開花を得意とする咲が優勝を決めるのにふさわしいツモ牌となっておりました。
追記:コメント欄で指摘があったとおり最終的な和了形は四連刻で古役の役満。当然大会ルールでは不採用となっているわけですが、鳴きチンイツ:5翻、トイトイ:2翻、三暗刻:2翻、三カンツ:2翻、嶺上開花:1翻、赤五筒:1翻の計13翻で結局役満に持って行くという力技が凄い。

・まとめ
咲には花に見立てられる五筒、衣には月に見立てられる一筒と、それぞれの打ち筋を象徴する牌が大きな意味を持っていた印象。
特に咲が優勝を決める場面は、負けることで自分が変われるかも知れないと一筒を切る衣、そして衣と一緒に麻雀を打つのが楽しいと語る咲が、その気持ちを汲み取るかのようにそれをカンをし、五筒を持ってくることで勝利するということで、牌のやりとりにそれぞれの気持ちが込められているかのようでしたよ。
ある牌に特定の意味を持たせるのは、麻雀漫画ではよくある手法だったりするわけですが、古役という目立たない形を用いるのは手の込んだ演出。しかも古役を知らなければ話が理解出来ないかというとそうではなく、セリフだけでも追えるようになっていて、それを密かに補強するかのように扱われているのには感心させられました。
物語を優先しつつ、細かい仕込みも忘れないということで、原作者の麻雀に対する深い造詣が伺うことが出来ましたよ。