「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」は正しいエンタテインメント作品である(ネタバレあり)

TV版の放送終了から2年半を経て、ほむほむが更に重い愛を抱えて帰ってきましたよ。
まどかのいない世界で戦い続けた末に疲弊した彼女が救済されてめでたしめでたしで終わるのかと思いきや、そこからシリーズ全体をひっくり返す大どんでん返しに至るという驚きの結末。続編となる劇場版が発表されたときは、あれだけ綺麗に終わらせた話の続きを作っても蛇足になるだけなんじゃないかとか思いましたが、そんなありきたりな予想を見事に上回る出来映えとなっておりました。

上映開始前の関連記事では、今回は賛否両論になりそうみたいな話が関係者から漏れていたわけですが、自分として全面的に賛意を示したいところで、それはエンタテインメントとして観客を楽しませることに誠実な作品となっているから。
前半はオーソドックスな魔法少女ものっぽくキャラクターの活躍させて分かりやすい楽しさを描きつつ、中盤からそれが偽りであるとして誰が何のためにという疑念を呼び起こす方向へと傾斜。真実が明らかとなって障害が排除され、偽りの世界を作り出した人物が本当に待ち望んだ結末が訪れるのかと思いきや、救済される本人が約束された救済を拒んで自らの願望のために世界を改編して、かりそめの安息の中で新たな対立を匂わせて終わるという。観客の見たいものを見せた上で予想外の方向へと展開させることで、物語に新たな広がりがもたらされ、期待通りになる楽しさと、それを上回る驚き、そして新しい期待と、どれも高い水準で達成されたエンタテインメント作品でしたよ。特にTV版で一度完成された世界を破壊して、再び物語に広がりを持たせることはなかなかできることじゃないなと。
いくつか気になった点を挙げるとすれば、情報量が多くて咀嚼する前に話が次へと進んでることなんだけれども、これは何回も見直したくなるという意味では利点になるのかな。あとほむらが世界を改変する手法がちょっと強引だったことで、TV版でまどかが宇宙を作り替えた時はインキュベーターの語る宇宙の法則として作中で示された設定の中で世界を改変されたのに、今回では一途な愛が呼んだ奇跡ぽくて後付け感があったかなと。まあこれもまどかによって改変された世界だからこそ起こることなのかもしれませんが。
と、まあそんな感じで、気になるところも贔屓目に解釈したくなったりして、じっくりと何度でも見直したくなる作品となっておりました。BD待ちきれなくて、あと何回か劇場に見に行っちゃうかも。
 

以下余談。
パンフレットのインタビューで興味深い解釈の違いがあったので引用してみますよ。
ほむらの結界内のまどかについて、新房昭之が語った部分

今回登場するまどかは、神様になった記憶を置いてきた本物のまどかなんです。決して偽物や作り物じゃないんですね。(P14)

同じく、虚淵玄が語った部分

今回、まどかは、ほむらにねつ造されたキャラクターとして登場します。ほむらによって都合の悪い記憶を摘み取られている状態ですね。(P16)

記憶が改変されているという点では一致しているものの、総監督は「本物」と語り、脚本家は「ねつ造」と語るという真逆の発言。
キャラクターをもう一度活躍させたいと言う新房と、続編を作るつもりはなかったと言う虚淵のスタンスの違いが端的に現れているのかなぁと思うわけですが、中心となるスタッフの間でもこんな解釈の違いがあるんだから、見る人によっていろんな解釈があるのは当然なんだろうなと。この作品に限らず創作物全般に言える話として。