「スカイ・クロラ」

押井守監督の最新作。見世物として人為的にコントロールされた戦争が行われる世界で、戦うことを運命付けられている少年少女の姿のまま歳を取らない存在たちが織りなす物語ということで、現実とのメタファーが強く感じられるものとなっていましたよ。ティーチャーというあだ名で呼ばれる敵の存在、国家の介入によって唐突に中止される戦闘、戦う当事者の意思とは無関係に応援をする一般の人々といった要素にその感が強く。記憶のあいまいさや、そこから来る自己の存在の不安定さみたいな要素も入ってたりして、そこら辺はいかにも押井監督らしいところでした。
作品の方向性としては、少ないセリフで間を大きく取り、人物の仕草で心情を語らせる演出となっていて、どちらかというと芸術っぽい映画な雰囲気。直接的な描写こそありませんでしたが、いくつかあるラブシーンには濃密なエロスが漂っておりました。3DCGによる航空戦は、スピード感と圧倒的な物量によって見ごたえのあるものでした。
監督がこの映画に関して若い人に伝えたいことがあるという意味を言っていた通り、管理された世界で同じことを繰り返しているように思えてもがんばろうみたいなメッセージは伝わってきましたが、物語の大半をただ流されるままに過ごし、ぼんやりと戦ったり主人公が、別の基地のパイロットに指摘されることでいきなり自我に目覚めるくだりは唐突な印象。
(以下結末に関するネタバレあり)
主人公がティーチャーに敗れ、あっけなく終わったかに思われたところでエンドロールのあとに用意されているエピローグは、そのメッセージを強調するものなんだろうけれども、見世物として行われる戦争という設定のせいかゲームをリセットしてやり直すようにも見えてしまって気持ち悪さを感じてしまいましたよ。現実的なテーマを扱っているのに死んだ主人公が生き返ってやり直しはないんじゃないかなぁと思いました。