喰霊-零- 第9話「罪螺旋」

黄泉が殺生石を受け入れるまでの話。身体の自由だけでなく声さえも奪われるという重苦しい展開となりながらも、彼女の心の動きを視線や表情の変化で丁寧に見せる作りになっておりました。
飯綱との婚約の解消を告げられて慟哭する場面は、声のないことが逆に彼女のおかれた状況を強調していて迫るモノが。たしか5話だったかの神楽との会話で、家を継ぐことにあまりプレッシャーを感じていない様子だった飯綱が、家によって黄泉との仲を引き裂かれるのは皮肉な展開でしたよ。
神楽が黄泉のために泣くのは心を打つ場面でしたが、その後の神楽からの、憎しみで人を殺したりしないという信頼が、彼女を追い詰める形になるのはすれ違いの悲劇といったところ。黄泉のやったことを受け入れるのではなく、やっていないことを信じるという神楽の態度は、信頼というよりも理想を押しつけているようで、そのことが黄泉が暗黒面に墜ちることに影響を与えていそうですよ。神楽の一度目の涙は、どん底の黄泉にとって安らぎをもたらすものとなっていたわけですが、二度目の涙は彼女からの不信を突きつけられるものになっていたのが対照的。
黄泉が殺生石を埋め込まれるところがやたらとエロティックで、話の流れとのギャップに戸惑いながらもちょっと興奮したんだけれども、彼女が身体の自由を取り戻すという生命力の回復を見せる場面ということで、単なるサービスではない演出的な意図があるようにも思いました。