CENCOROLL-センコロール

宇木敦哉が監督と脚本、ついでに作画と演出まで一人で務めた作品。
約30分というTVアニメの1話分の上映時間ながら人物たちのキャラがよく立っていて、話としても、変な生き物を従えた少年たちの戦いに、ヒロインが巻き込まれるというか自分から入り込んで行く過程が見る側の作品世界への興味とシンクロしていて引き込まれるものがありましたよ。ここら辺のまとまりの良さは、は一人で作ることのメリットとなっている模様。白くてブヨブヨして不定型な感じのセンコと呼ばれる生き物は独特の雰囲気があって、表情豊かなヒロインは魅力的でしたよ。
作画的にも見所がてんこ盛りで、特に一度目のバトルで、センコが次々と変形する様子は、とても一人で描いたとは思えない出来映え。ただ二度目のバトルでは、見た目のスケールが大きくなってはいるものの、ヒロインをはじめとする人間を中心とした展開となっていて、生き物同士が戦うことによる絵的な面白さがなく、バトルが盛り上がらないまままま終わってしまうので、尻すぼみな印象を受けてしまいましたよ。この点は、全部一人でやるために時間や労力が足りなくて絵的にトーンダウンしちゃったのかなぁと思わせるものでした。また背景も写真を加工したことが丸わかりだったりするところがいくつかあってちょっと安っぽく見えるところもありました。
一人で商業アニメっぽいものを作るといえば、まず新海誠が思い浮かぶわけですが、彼の静的な作風に対して、今作はダイナミックなアクションが随所に見られる動的な作風で、一人でよくここまで描いたなぁと、個人制作の可能性をさらに広げた印象。作品世界や人物も魅力的で続きが見たいと思わせるものでしたよ。
もし続編があるとしたら、こだわらなくてもいいパートの作画は他人に任せて、監督本人はこだわるべきところに力を注ぐことを望みたいところ。アート系のアニメみたいに一人で作る事に意味がある作風でもないし、また一人で30分のアニメを作り上げた人物として宇木敦哉という名前は十分知られたわけで、次は全体の完成度を高めたものを見てみたいなと。