ゲド戦記

夏の話題作みっつめ。原作は未読。
主人公がゲドに導かれ、ヒロインと出会うことで命の大切さを知る話・・・にしたかったんだろうけど、あまり上手くいっていない印象。
テーマを前面に押し出した作りで、登場人物が全部セリフで説明してくれるので、その点については非常に分かりやすいというか、イヤでも分からされるというか。でも、そういうのは登場人物に魅力を感じ共感を覚えてこそ説得力がでてくるもので、最後の最後までウジウジしている主人公と万年ヒステリーのヒロインに魅力や共感を覚えるのは、かなり難しいことのように思いました。同じようなことを言っているのに、深夜によく流れてる公共広告機構の「あなたが大切だ」云々というCMの方が、より訴えるものがあるというあたりが、この作品の出来を表してるんじゃないかなと。
物語の方もまとまりがなく、冒頭で世界に異変が起きていることが語られるのに、それについて全く放置したまま終わったのには呆然。主人公がそうであったように一人一人が命の大切さに気付けば改善されることを仄めかしたのかもしれないけど、そもそも主人公に共感出来ないので、そんなこと仄めかされても反応に困るというか。クライマックスとなる事件を引き起こす、ゲドと悪役のクモとの因縁も、セリフで何かあったらしいことが語られるだけで、原作未読者はおいてけぼり。ジブリらしいアクションシーンもほとんどなくて、印象的な場面を思い返えそうとしても、浮かぶのは、終止登場人物たちがボソボソと会話をしていたことばかりで、エンドロールが流れ始めたときに感じたのが、主人公たちと冒険の時を共有した喜びではなく、暗くて狭い映画館のシートからやっと開放される喜びだったのはどうしたもんかなと。
長大な原作の途中のエピソードを抜き出して映像化したのが、こうなった原因のひとつなんだろうけど、なんでそんな中途半端なことをしたのかと、企画を立てた時点から何か間違っていたんじゃないかと思いたくなってしまいました。