狼と香辛料 第1話「狼と一張羅」

中世のヨーロッパ風の世界を舞台にした異種交流譚といったところ。中世といってもありがちな剣と魔法の世界ではなく、狼と出会うこと以外は普通の行商人を主人公に牧歌的な風景の中を旅をするといった作りが新鮮。その一方で、村の収穫祭を異教扱いする一神教の存在や、富を蓄えることに腐心する村人、そして必要とされなくなって村を出るヒロインと、牧歌的な雰囲気の中にもそれらが大きく変わりつつあることを示す描写が、これからの物語を予感させるものでしたよ。
ヒロインが主人公に裸を晒しながらも本来の姿を見せることを躊躇したり、そのことで彼の前から立ち去ったと思ったらあっさり戻ってきたり、彼の一張羅を勝手に着てみたりするあたりは、人の姿を取っていてもそれとは異なる存在であることを印象付ける演出。村の娘が主人公に遠まわしな求婚をする場面は、商人らしいセリフ回しに捻りが効いていて、彼女が見せる仕草がなかなかそそるものがありましたが、それを主人公がはぐらかすことで、彼にも旅を続ける何かしらの事情があることを仄めかすものとなっておりました。
風景の描写や祭りを迎える村の様子はのどかな雰囲気に覆われていたけれども、その中で描かれる変化の兆しや人物たちの曰くありげな事情が興味を引くところ。登場人物の心の動きを表情や仕草で見せるのが丁寧でよかったですよ。