魔法遣いに大切なこと〜夏のソラ〜 第12話「夏のソラ」

まず良かった点を上げると、安易に生き返らせたりせずに死を死として描いたことでしょうかね。まあいくら考えてもこれくらいしか出てこないわけですが。
死の病に冒されたヒロインが前半で予定通りに死亡。彼女が着ることの出来ない花嫁衣装を魔法で見せるというシチュエーションは、たしかに可哀想なんだけれども淡々と描かれるので、どうにもこころに響くものがなく。死を前にした心情に深く踏み込まずに、あえて普通に過ごす姿を描くことで、懸命に生きるけなげさを見せようとしているのかも知れませんが、正直登場人物た何を考えてるのか分からなくて、何を見せられてもその心情に近づくことが出来ませんでした。
後半でいきなり五年後に飛んでその後の脇役たちを描くんだけれども、その中で誰より印象に残るのが、作中でヒロインと数えるほどしか会話をしてなかったストリートミュージシャンというのがよく分からない作り。監督自らが作詞した歌を長々と聴かせてくれるんですが、そんな本筋と関係のないところに力を入れるんだったら、もう少し別なところに力を入れた方がいいんじゃないかなぁと思いました。
ヒロイン死んでも脇役たちの心の中に生き続けるみたいな感じで、他人の心に何かを残すことが出来るということを伝えようとしていた片鱗は伺えるんですが、登場人物の心情が全く追えないそっけない描写に、それとは裏腹に監督の趣味を押しつけるかのような本筋と関係のないミュージシャン関係の描写と、脚本の方向性と監督の趣味が最後までかみ合わずに終わった印象。
違和感ばかりが感じられる実写感の強い背景(一話の使い回しが多い北海道の風景はまだマシでしたが)や、写真加工という縛りから来る背景の単調さ、そして明らかに労力を抑えるためと分かる画面から顔がはみ出すような超アップや逆に顔が判別出来ないような超ロングショットに人物すらいない背景カットに多用と、映像的な貧しさも辛いものがありました。
作品自体はもうどうでもいいんですが、なぜこんなものになったのかには強く興味を惹かれてしまいますよ。