喰霊-零- 第12話「祈 焦 -いのりのこがれ-」

神楽の決意と黄泉の想いを描きつつ、原作の前日譚として進められた物語を原作へとキレイに繋げるということで、良く出来た最終回となっておりました。
相手を想うからこそ自ら決着をつけることを望み、同じように想うからこそ倒されることを願うというのは古典的とも言える流れだけれども、信じることの本当の意味を知った神楽の決心と、負の感情の中に残された黄泉の最後の願いが重なり合うクライマックスは感動的。戦いの最中に入る神楽の回想やトドメを刺される直前に入る黄泉の長いモノローグが大いに盛り上げてくれました。
黄泉の死によって彼女の願いもむなしく、神楽も人としての心に歪みが生じることとなり、カテゴリーDの大量抹殺という行動にそれが示され、隊長とナブーの会話によって彼女の心の変化が語られるという。その結果として純真な女の子から二年後の飄々として老成した少女へと変貌するわけですが、それが周囲と深く関わることを拒んでいるようにも見えるところ。原作の詳しい内容は知らないけれども、これを見る限り、神楽という少女の再生の物語として位置づけられているようで、黄泉が再登場することにも意味があるように思いましたよ。
エピローグの室長と桐が印象的。黄泉から冥や桜庭と同列に扱われながらも生きていたのが意外でしたが、その関係が姉妹のように描かれているあたり、自分と神楽を重ね合わせて、黄泉も手を下せなかったんだろうなと思えるところ。
室長が引退して元室長になっているらしいことは、組織や社会的な立場を離れたことを、そして桐の精神が退行していることは、庇護を必要とする存在であることを象徴している模様。穏やかで仲むつまじく描かれていたけれども、退魔師の家系に翻弄され、一方の盲目的な信頼によってねじれていった神楽と黄泉の関係を考えると複雑なものが残りました。
ひとつ書き忘れていたので追記。前半の戦いで神楽が黄泉を石で殴る場面には驚きましたが、黄泉がそうであったように父親をなじられたことで神楽も衝動的に行動してしまうということで、彼女が黄泉のことを本当の意味で理解するきっかけとなっていた印象。