青い文学 第9話「走れメロス 前編」

誰でもあらすじくらいは知っているであろう太宰治の有名作品のアニメ化。「作者」が大きく前面に出てくるということで、原作をそのまま映像化するのではなく、作品が創作される過程とそこから露わになる作者の過去を並行して描くという、なかなかに挑戦的な構成となっておりました。
小説ではなく戯曲として執筆される点や執筆される年代が実際とは異なっている点からすると、「作者」は太宰本人ではなく、あくまで想像上の人物であり、既にある作品から創作する過程を創作するみたいな作りになっている模様。原作は過去に何度かアニメ化された事もあるので、今更同じ事をしても仕方ないので独自色を盛り込んでみたといったところでしょうか。またストーリーについても原作は感動的ではあるものの単純というか、今にして見ると理想が高すぎてついて行けない面もあるので*1、友人に裏切られた経験を持つ「作者」という仲介役を置くことで「走れメロス」をどのように受けとめるのか、というメタな物語になっているように思いました。
絵コンテと演出が「魍魎の匣」の監督を務めた中村亮介ということで、それを思い出させる画面作りがチラホラと。舞い散る桜の花や画面の色調にそれが感じられましたよ。

*1:ながいけんが、人物像をひっくり返して裏切りと猜疑心の物語にした「走れセリヌンティウス」なんてパロディもありました。