「バカとテストと召喚獣」の第3話に見られる繰り返しと対称性について

バカテスの3話が大変面白かったので、それについていろいろ考えてみましたよ。
話の中身としては、吉井と彼を取り巻く人物たちの、おバカな日常と不器用な恋愛に費やされているわけですが、単純にそれらを並べて見せるだけでなく、それぞれのネタに繰り返しや対称性といった関連性を持たせることで、話としての完成度を高めていたのでそれについて述べてみます。

  • 繰り返し
    • 吉井によるカップ麺の分割
    • 吉井とAクラスの久保との衝突
    • 霧島翔子に長編映画を強引につき合わされる坂本
    • 翔子に憧れのまなざしを向ける姫路と美波
    • 美波のプロレス技とムッツリーニの激写

カップ麺ネタは3回あるわけですが、一回目は学校生活、二回目はデート、三回目はCパートと、今回の話の中において時間と場面が連続してないエピソードの起点として扱われていましたよ。吉井と久保との衝突はCパートへの前振り、映画館での繰り返しは、食費を削って女の子につき合わされる吉井と拘束されまくりの坂本と、モテるのにあまり羨ましくない二人の境遇を際立たせるものでしょうか。プロレス技と激写は今回に限らずセットで使われるお約束。

  • 対称性
    • 翔子に振り回される坂本と美春につきまとわれる美波
    • 姫路&美波の私服と、吉井&秀吉のメイド服
    • 姫路の渡せないラブレターとAクラス久保の渡ってしまったラブレター
    • 秀吉と吉井の生写真

対称性の意味については、ネタを単純に繰り返すのではなく、人物やシチュエーションを入れ換えることで別の意味を与えるもの、といったくらいの感じで。
坂本と美波の件については、翔子の積極さに憧れていた美波が、むしろ坂本と同じ目に遭うという皮肉な展開に。私服とメイド服については、女性陣の可愛らしさと男性陣のそれが同等であることを示し、これもアリなんじゃないかと思わせつつ、それによってさらに話がややこしくなるという。ラブレターについてはBパート終わりの会話を受けて、姫路からのものと思わせつつ、実は男からだったということで話全体のオチをつけるものとなっておりました。生写真の件は吉井が男に好かれて引いてたけど、じゃあ秀吉の写真を集めているお前は何なんだよというツッコミどころかなと。

  • まとめ

探せばまだまだありそうですが、気付いた範囲ではこのくらいで。バカバカしいネタを詰め込んでいるだけのように見えて、その実、それが作中の出来事の起点として機能していたり、あるネタが別のネタやオチの前振りになっていたりして、脚本がよく練られているなぁと感心。話としてのまとまりはもちろん、テンポの良さといった演出面の良さも、これが元になって作られているように思いました。

  • 余談

ちなみに絵コンテと演出がナベシンことワタナベシンイチということで、世界観を無視して作中に自分を登場させるのが大好きな人だったりするわけですが、今回は映写機を回す人がアフロ*1だったり、クレープ屋に出てきた豚のかぶり物がはれぶた*2だったりしたくらいで、本人ネタはおとなしめだった模様。本人ネタはあまり評判の良くない人だけれども、ハイテンションな作風には定評がある人なので、今回は彼の良い面が特に出ていた印象。上で挙げた完成度の高さについては、主に脚本段階によるものだと思いますが、それを生かして映像化するには絵コンテや演出の力も大きく関わってくるわけで、普通にいい仕事も出来る人であることを再確認しましたよ。

*1:彼のトレードマーク

*2:はれときどきぶた」の登場人物。TV版の監督がワタナベシンイチ