蟲師 第26話「草を踏む音」

BS版もついに最終回。山を渡り歩く少年と里で暮らす少年の物語といった感じで、いつもの蟲によって引き起こされる怪異みたいなのはないんだけれど、話の背景にはこの作品ならではのアニミズム風の設定があって、独特の雰囲気を出しておりました。二人の少年の、仲良くなったりケンカをしたりする様子は、いつも通りの引いた視点からの淡々とした描写で、でもそのことが逆に、遠く離れていてもお互いを気に掛けていることが最後に明らかになることの余韻を強めているように思いましたよ。
今回、ギンコは脇役だったけど、二人の少年の別れのに立会い、そしてその後も変わらぬ友情を伝える者として現れて、蟲と人とを繋ぐだけでなく、人と人とを繋ぐ役割を担っていて、最終回に蟲ではなく人を描く話を持ってくるのがニクイ構成でした。

 
・まとめ
「原作を忠実にアニメ化する」というのが長濱博史監督の目標だったとのこと。素人考えでは話を同じに作るだけなんて簡単な気がするんだけれど、アニメにするには動きや色や音楽や声といった漫画にはない要素が必要になるわけで、それらを加えた上で原作に忠実であるのは、おそらく並大抵なことじゃないんだろうなと。
異形でありながらもただあるようにある蟲を見せる淡々とした描写や丁寧に描かれた日常的な動作、そして濃密な背景や民族音楽を思わせる音楽や自然を感じさせる効果音も大変素晴らしいもので、スタッフの原作に対する敬愛を感じさせるものでした。声優については、最終回の小清水亜美のように、若手と呼ばれる人たちの普段のイメージとは違う抑えた演技が聴けるのがよかったですよ。奇想天外な蟲の設定や、生命の割り切れなさとでも言うべき複雑な余韻を残すストーリーも印象的でした。
優れた作品を生み出した原作者とそれをシリーズを通して高いクオリティでアニメとして見せてくれたスタッフに感謝しつつ、時期が来たら続編を期待したいところ。