ef - a tale of memories. 第12話 「love」

最終話ということでOPが日本語バージョンに。映像の方も変更されて、サビの部分で溶けて泡になる女の子を男性キャラが救うという演出で最後に作品の結末に合わせて映像も変えてくる仕掛けに感心しましたよ。
前半は蓮治と千尋の物語の大詰め。千尋の記憶から自分が消えたことに落ち込む蓮治が紙ヒコーキで千尋の本心を知り、それでも彼女の側にいることを選び、千尋もまた彼のことを忘れられずにいたということで、ありがちと言えばそうなんだけれどもなかなかに感動的な結末。無人駅において常に壁を背景として囚われていることを暗示されていた千尋が、蓮治と抱き合うところでようやく壁の外側に描かれるのが象徴的で、奇跡についての火村と久瀬の言葉の後に蓮治の元に紙ヒコーキが現れるのは偶然だけれども奇跡ではなく、それをキッカケにしたその後の行動に意味があることを描いているように思いました。
一度目に駅で再会した時に、千尋が蓮治を忘れているかのような質問を投げかけるのは、既に彼のことをおぼろげにしか覚えていないようでもあり彼を試しているようでもありで、いずれにせよ彼女が神であることを表す場面で、その神さまの孤独を王子様が受け止める物語であることを再確認。自分と千尋のことを題材に小説を書く蓮治が、失われた日記を補完すると同時にこの先も千尋の記憶を彼女の代わりに引き継いでいく決意を感じさせるものとなっておりました。
後半はシリーズを通してのエピローグ的な扱い。学校の屋上という同じ場所にありながら、三組に分かれた人物たちが一緒にいるわけではないらしい様子が不思議な味わいで、それぞれが語る夢や生き方という共通のテーマについての異なる立場を強調していた印象。ミドルショットで捕らえられた人物たちの、視聴者に語りかけるような真っ直ぐな言葉がちょっと恥ずかしかったりもしましたが、登場人物と同年代の視聴者に対する作り手のメッセージが強く感じられるもとなっていて良かったですよ。火村と優子の再会で終わるのは、これから発売されるゲームの後半へと繋がっているんでしょうか。

・まとめ
人物をシルエットとして見せるのをはじめとした大胆な演出が印象的。みやこの留守電や彼女が公衆電話から別れを告げる場面のように、時として作画的な労力を省くための苦肉の策として見えることもありましたが、そういった限られた条件の中でも新しく効果的な表現を作り出そうとしているように思いました。
インパクトのある演出の一方で、物語としては登場人物たちの恋愛模様と夢を追いかける姿を描いたオーソドックスな青春群像劇な作りとなっていて、紘を中心とする三角関係や記憶障害を持つ千尋と蓮治の関係と、恋愛模様としては途中経過や結末は興味を引かれるものだったけれど、それぞれの人物が生き方を模索する方向としては恋愛関係の結末に合わせてなんとなくまとまったようにも見えてしまいましたよ。話数的な制約で深く掘り下げられなかったのしれませんが、ちょっと残念。また、千尋が自分の体験を、過去の自分が書いた記録として受け入れることから来る自己の連続性の希薄さの問題ももっと掘り下げて欲しかったように思えて、紘と蓮治のパートの繋がりが最後までよく分からなかった点も引っかかるものがありました。
個人的な興味から気になるところもあったけれども、全体としては密度の高い演出と物語の進行で全話を通して見ごたえのある出来栄え。夕日のギラついた表現や人物に光をまとわせるエフェクトといった、光についてのこだわりも素晴らしかったです。