青い文学 第4話「人間失格 #4新世界」

人間失格編の最終回。主人公が得たひとときの幸福が語られるものの、最後にはすべてを失うというなんとも後味の悪さが残る結末でしたよ。前半の不安定さを残しながらもそれなりに満たされている様子から、父親の死に友人の出征、そして妻の身に起きる事件と、主人公を突き落とすような出来事が立て続けに起こる展開は強烈で辛いものがありました。
妻の件に関しては彼がしっかりと向き合えば救われる道もあったんだろうけれども、それが出来ないのが人物であることはこれまでにも描かれてきたわけでこの結末は必然なんだろうなと。自分のよりどころを他者に求め続けた男の哀れな末路といったところでしょうか。そんな彼を女は優しいと評するわけですが、他者ではなくひたすら自身を責める姿がそう見えるのかも知れず。
火鉢の中に主人公と妻が出会う場面が再現される様はインパクトが大きく、また回想として描かれる妻との生活をガラス戸に投影する演出も圧巻。自殺未遂の後、主人公が街を彷徨う場面は、雪が降る中を兵士が行進するということで、タバコ屋の娘だった妻と出会う場面が繰り返されていたわけですが、今回は誰も現れず自身の吐いた血が雪を赤く染めるだけという。路面電車の終点を越えて先へと進んで行く姿は、人間らしさを求めてついに得られなかった主人公の行く末を暗示するものとなっておりました。
全編に渡って漂う退廃的な雰囲気が印象深く、繰り返し流れるヴァイオリンによる甘美な劇伴がそれを強めていましたよ。