青い文学 第7、第8話「こゝろ 前編・後編 」

夏目漱石の有名な作品のアニメ化。お話としては「先生」と「K」との間の友情と一人の女性を巡っての葛藤、その果ての悲劇といったところで、そのまま昼メロにでもなりそうな題材。三部構成の原作の下にあたる核心部分を、先生の視点で描く前編とKの視点から描く後編に再構成するということで、アニメ化に当たっての独自の解釈を交えて描かれているのが興味深かったですよ。
同じ出来事を語っているはずなのに、視点によって夏と冬という別々の季節に設定するのは大胆なアレンジ。明るく彩度の高い前編の画面に対して、彩度が低く青みがかっている後編、また、先生からは桔梗、Kからは向日葵に例えられるお嬢さん等々、様々な面において対比が仕込まれているのが印象的で、先生とKがお互いにお互いを恐れ、疑心暗鬼に陥る様子も明確になっておりました。
また先生とお嬢さんの結婚が下宿先の未亡人の画策であり、お嬢さんが、Kに気持ちを寄せながらも、共に生きていくことを選べなかったものとして描かれているのも興味深く。Kが先生に対する嫉妬から彼を殺そうとしたところで、お嬢さんの優しさに触れて自らの命を絶つことを選ぶというラストも、衝撃的な映像とは裏腹にもの悲しさが残るものとなっていましたよ。
原作を映像化する際にそれをアレンジすることの是非についてはたびたび話題になりますが、今回のように、よく知られた作品に独自の解釈を加えることで新しい側面を堀り下げるのは面白い試みのように思いました。