けんぷファーの面白さを考える 〜凡庸な設定で特に注目もされていなかった作品が、突然面白くなった理由について〜

開始当初は、ハーレムにTSに百合と受けそうな要素を盛り込んだ安易な学園バトルものかと思われた「けんぷファー」ですが、ここ何話かでかなり面白くなってきたのでその理由を考えてみますよ。
分かりやすい理由としては、「化物語」の戦場ヶ原ひたぎにメジャーになった感のある素直クール属性を持つ雫の存在や、物語を背後で操る楓の本性が明らかになってきたことがあるのは言うまでもないことですが、それらには共通項があり、登場人物や物語にその共通項を散りばめることで、作品が構築されていることについて述べたいと思います。
では、その共通項とは何か?
それは二重性と言えます。

まず人物の設定面での二重性

  • ナツルは男でありながら変身すると女になる
  • 紅音は変身前は内気な少女で、変身後はハイテンションな強気キャラに
  • 雫はクールビューティでありながら、恋愛については積極的
  • 水琴は幼なじみとして振る舞うものの裏にはナツルに対する恋愛感情がある
  • 楓はおしとやかタイプの正統派ヒロインかと思いきや、ガチレズ、さらには物語の黒幕的な役割を担っているという

男女どちらのナツルもひたすら受け身であり、その周りをヒロインたちが取り囲むという、ハーレム物の構造となっているわけですが、それぞれ人物が二重性を持つことで、人間関係がなかなかに複雑な構造となっている印象。
紅音は変身の前後でキャラが正反対なのにどちらもナツルに好意を抱いていたり、雫はクールな物腰でありながら、ナツルに対する言動は積極的であり、楓の男女のナツルに対する好意が真逆で、EDの歌詞そのままにナツルとの好意が一方通行のすれちがいでありと。水琴は途中参加というハンデを考えても影が薄いわけですが、それはホントは好意を寄せている幼なじみという平凡な設定にあるのかなと。

物語としては、ケンプファーの戦いとラブコメという二つの要素を中心に進行する構造。他にも楓が文化祭のミスコンで見せた寸劇が、ケンプファーの戦う理由を暗示しているようであったり、同じ学校なのに男女が別校舎で厳密に区切られてたりと、作品における様々な要素で二重性が見られますよ。

表があっての裏ということで、二重性を描くのは時間がかかるわけで開始当初はありがちで単に安い設定の作品と思われていた(自分も思ってました)のも無理からぬことなのかなと。しかし物語が進につれて、徐々に二重性が積み重ねられ、8話で雫が素直クールキャラとしての本領を発揮、9-10話で楓の本性が暴かれ、戦いの黒幕であることが露わになると同時に、ナツルを操ることでラブコメ領域にも介入し、バトルとラブコメを融合させ、物語を一気に架橋へと導くということで、ここ何話かで物語が盛り上がり注目度が上がるのは時間をかけて二重性を描いてきたことによる当然の結果と言えるんじゃないでしょうか。
全12話らしいのでまだ二話ほど放送が残っているわけですが、この勢いを維持したまま終わってくれることに期待。