青い文学 第10話「走れメロス 後編」

自身が裏切られた記憶に捕らわれ執筆が滞るわけですが、友人との再会を経てわだかまりが解消されて作品が完成するという展開。作家の心情とメロスの物語がシンクロしていく様は圧巻で二人が和解する場面は感動的でしたよ。「走れメロス」のように、友人のために人質になるような劇的な出来事はないけれども、そこに描かれる友情は普遍的であることを示しておりました。
作品をそのものではなく、それを創作する作家を置いて作品を創作する過程を映像化するという、なかなか捻った作りだったわけですが、よく知られた作品を、テーマを損なうことなく新しい切り口で見せるという意味で成功しているように思いましたよ。
机の上で「メロス」の人物たちが格闘をはじめたり、かと思えば舞台に向かって大声を出したりと、トランス状態に入った作家の視点からの映像はインパクト大。また懐中時計の扱いが印象的で最後に再び作家の物となるわけですが、それが壊れて止まっているのは、約束が反故にされたことで友情が一度は失われたけれども、再会を果たすことでそれが取り戻されたことを象徴しているようでした。